掛川100景 【No.17】 掛川層群
100万年以上前の海の世界を今に伝える『掛川層群』
掛川層群は、静岡県西部に広がる鮮新世(せんしんせい)から更新世(こうしんせい)の海底に堆積した堆積物からなる地層です。
掛川層群は、地質学や古生物学の重要な研究対象になっており、多様な化石群は当時の環境を解明する手がかりとして注目されています。
100万年以上前の海の世界を今に伝えるその地層は、古代から積み重なる掛川の記憶といってもいいでしょう。
掛川層群をどうミルか?👀
👀01. かつて掛川は海の底だった!?約400万年前から100万年前の化石が発見
「掛川はかつて海の底だった」
そう聞くとビックリするかもしれませんが、これは事実です。
掛川市内で見られる地層から推定すると、今から約400万年前の海岸線は、掛川市街地の北側丘陵(きゅうりょう)地帯にあったとされています。
わかりやすくするために学校の位置で示すと、日坂小学校、掛川北中学校、桜木小学校、原谷小学校を結んだあたりがかつての海岸線です。
このあたりの地層は、浅海(せんかい)や沖合いの海底で堆積した砂や泥からできていて、約400万年前から100万年前にかけての海の生き物の化石が見つかっています。
👀02. 掛川層群で見つかった化石から当時に思いをめぐらせてみよう
掛川層群から出土する貝化石は、現在の台湾付近に生息するものが多く含まれているため、かつての掛川は熱帯域から温帯域の海だったと考えられます。
掛川層群からは、主に以下のような化石が多く産出されています。
貝の化石:とくに大日層(だいにちそう)から多数の貝化石が産出されており、浅海性のやや暖かい海に生息していた貝類の特徴を持っています。
有孔虫の化石:海に生息する軟体動物である、有孔虫の化石が見つかっています。
植物の化石:9科14属の植物化石が報告されており、とくに土方累層(ひじかたるいそう)から産出しています。
これらの化石は、それぞれ異なる生息環境や生活様式を持ち、当時の海の中で多様な生態系が共存していたことを示しています。
👀03. 掛川のまちの上をクジラが泳いでいた!?
掛川層群からは貝や植物の化石だけでなく、サメの歯の化石、さらにはクジラの化石も見つかっています。
掛川市でクジラの化石が見つかったのは1999年で、その後本格的な発掘調査が行われ、約200万年前のクジラの肋骨の化石と多数の骨片が発見されました。
掛川のまちがかつては海の底で、その上をクジラが泳いでいたことを考えると、なんだか不思議な気持ちになりませんか?
ちなみに掛川市にある事任八幡宮には『くじら山伝説』という伝承があり、その中にもクジラが登場します。
掛川とクジラにはどんな接点があるのか、調べてみるとおもしろいかもしれません。
👀04. 掛川層群の露頭(ろとう)を探してみよう!
露頭(ろとう)とは「岩石や鉱脈の一部が地表に現れているところ」を指します。
掛川市にもいくつかの露頭があり、その1つが県道磐田掛川線の結縁寺IC付近でしたが、現在は草木が生えてしまい、地層を見つけるのは難しい状態です。
またもう1つの掛川市杉谷にある露頭に関しては、まだかろうじて地層が確認できます。
地層は山や丘を掘削(くっさく)したり、造成(ぞうせい)したりするときに確認できることが多いです。
取材当時はちょうど挙張神社(あげはりじんじゃ)前で工事が行われており、きれいな地層を確認することができました。
近くで工事が行われているときは注意して見てみましょう。もしかすると思わぬ場所で掛川層群に出会えるかもしれません。
◾️抜け道&寄り道100景〜掛川層群
サメの歯化石は古くからお守りとして使われてきた
掛川に「塩水が湧き出る」という伝説が伝わる神社がある
袋井市にある『宇刈里山公園(うがりさとやまこうえん)』で地層と化石が見学できる